第13回天然薬物研究方法論アカデミー「漢方研究再考」本音で議論

時間:2010-09-30

8月20日(土)、21日(日)の2日間主として漢方薬など天然薬物の科学的研究の方法論をテーマとしている「第13回天然薬物研究方法論アカデミー覚王山シンポジウム」が名古屋市内で開催され、107名が参集特別講演2題と2つのシンポジウム(10演題11演者)が行われる中で、活発な意見交換がなされた。


  

今回は名古屋の薬学部4校と愛知県薬剤師会のメンバーが実行委員会に加わり、「漢方薬をいかに使うか、いかに創薬するか」ということにテーマが絞られた。世話人の井上誠氏(愛知学院大学)は「経口投与を原則とする複合製剤である漢方薬の研究は難しく、低迷している。現代科学の手法を用いて、生薬を複数調合する漢方薬の薬物動態、薬効、薬能、薬理の解析、さらには疾患モデル動物(あるいは「証モデル動物」)の作成などにより、漢方に対する理解が進むと考える」と語った。


 

特別講演の演者をつとめた鳥居塚和生氏(昭和大)は、大学における漢方教育の標準化の必要性を論じるとともに、WHOが取り組んでいる伝統医学の国際的な標準化と、ISO内に伝統的中医学の国際規格に関する新規委員会が設立されたことなど、国際的にも伝統医学の標準化作業が進捗していることを報告した。


 

これに関連して、シンポジストをつとめた元雄良治氏(金沢医大)も、最近の中国における伝統中医学(TCM)のISOへのアプローチの現状に触れ、「欧米各国では標準化関連団体や企業の代表がISO関連の国際会議に参加して対応しているが、日本は"日本東洋医学サミット会議"など学術団体のボランティア活動に頼っているのが現状。産学官一体となった対応が急務」と指摘した。


 

同じく特別講演の演者の小松靖弘氏(サン自然薬研究所)は、実験に用いる方剤の標準化の必要性を論じ、「薬効薬理研究の情報から生物学的活性の規格設定の必要がある」とし、生薬の釣藤鈎が産地や種類の違いで異なる活性パターンを示すことや、甘草のグリチルリチン、麻黄のエフェドリン、人参・柴胡のサポニン類などの主成分だけでは生物活性や薬理効果が説明できないことから「生物学的活性の保証が必要」として、実験動物や疾患モデル動物の開発の現状を紹介。また「獣医臨床領域での臨床効果も期待できる」として、猪苓湯がネコの尿路結石に効果を示すことから実験。沢瀉が有効性を発揮して血尿が治まる可能性が示唆されていることを解説した。


 

このほか、「漢方研究の現状と未来を考えるむ」と題した2つのシンポジウムでは、北里大学の清原寛章氏、ツムラ研究所の五十嵐康氏、岐阜薬科大学の稲垣直樹氏、富山大学和漢医薬学総合研究所の櫻井宏明氏、金沢医大の元雄良治氏、国立医薬品食品衛生研究所生薬部の袴塚高志氏、ハーブ調剤薬局の金兌勝氏、金沢大学医薬保健学域薬学類の三宅克典氏/河崎亮一氏などによる8演題が組まれた。